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まえがき
社会人になると学生時代になかった変な掟がいっぱいある。この掟たちはいわゆる就業規則といわれるカッチリしたものとは違い、人事部から指導があるわけでもなく、教本があるわけでもない。自ら切り開いて習得していかねばならないのだ。本シリーズではインターン前もしくは就職前の学生を対象にこれらの変な掟たちを解説していきたい。

掟 其の一  「 お世話になっております。 」を使いこなそう!
掟 其の二  「 恩赦と兵舎 」
掟 其の三  「 商品券の掟 」  
掟 其の四  「 弔電・祝電  vol.1 」
掟 其の五  「 弔電・祝電  vol.2 」
掟 其の六  「 お局  vol.1 」
掟 其の七  「 お局  vol.2 」
掟 其の八  「 お局 〜最終章〜  vol.3 」

掟 其の九〜其の十六
掟 其の十七〜其の二十三
掟 其の二十四〜其の二十八

大学時代には全く使わなかったのに社会に出てから、かなり頻繁に言うようになった言葉に 「お世話になっております。」 というのがある。

「お世話になっております・・・。」って言われても・・学生だったらイメージできるのは、 ヨレヨレのじじいが「シモまでお世話になっております。」とか、 飲んだくれたオヤジが 「先生!ウチのセガレがいつもお世話になっております!」って感じだろう。
とにかく学生的にはこの言葉が、何か“すっごい世話になってる”感があります。 ところが社会人の場合、この言葉は電話で言うなら「もしもし」に相当するくらい頻発し、むしろ、会社で社外からかかってきた電話をとる場合は必ず言わねばならないのだ。
「はい、ホニャラ商事でございます。いつもお世話になっております。」
かかってきた電話をとったら同時に、相手に全く世話になってなくても、はたまた全く知らない 相手でもこれを一息に言ってしまわねばならないのだ。はっきり言って筆者も最初これを言う のにとても抵抗があったのを覚えている。

特に自分がかけた時、電話口に出た先方の若い女性社員に「お世話になっております。」などと 言われると「ふふふ、別に世話しちゃいないぜ。」と一人でブツブツ言ってみたくなる。
彼女に「えーと、フニャフニャさんお願いします。」と担当者名を告げると数秒後にふにゃふにゃ さんが電話口に出てくる。彼と僕はもう三ヶ月間一緒の共同プロジェクトを動かしてきて一日 に数回電話を交わす仲だ。「やー、毎度。毎度。えーっと例の件やけどね。・・」 ふにゃふにゃさんは東灘区出身で、関西弁で僕に対していきなり本題に入る。

そう! 会社の変な掟・其の一 「お世話になっております。」は世話になってない人ほど必ず使うのに、 実際本当にお世話になってる人には使わないのだ!
会社って不思議。

大学生時代、NTTは「NTT」だったし、日本テレビは「日テレ」だった。 しかし、サラリーマン社会において、他社の名前を口ずさむ時、絶対にそんなことは言わない。 リーマン的正解は「NTTさん」であり、「日本テレビさん」なのだ!人間でもないのにさん付け。 わけわからん。思わず「NTTさん、燃えないゴミの日は水曜よ。守ってね。」とか言ってしま いそうだ。とにかく他社を口にする時は呼び捨て厳禁なのだ。

そして、更に複雑なのが商談中の相手企業の呼び方および自社の呼び方なのだ。 結論から言おう。自社は「弊社(もしくは当社)」といい、相手企業のことは「御社(もし くは貴社)」という。この呼び方、新入社員のころメチャメチャ抵抗があったのを覚えてい る。僕の上司がしゃべっている。「弊社でこの度 開発致しましたこちらの製品は決して他 社様に負けない自信がございます。・・・」上司のトークは更に続く。でも、僕の脳ミソの 中は既にカマボコ兵舎のビジュアルであふれている。その兵舎から兵隊が次々と飛び出し てきてしまっている。もはや上司のトークは聞いていない。 すると今度は相手先の担当者が話し始める。「御社の製品のご説明はよくわかりました。た だ、少しだけ質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。・・・」『恩赦!?』再び僕 の脳ミソは 皇太子ご成婚で終身刑から20年の懲役に恩赦され、既に初老にさしかかって しまった連続強盗犯の顔が浮かぶ。

むーん、わけわからん。何で一つの企業にこんなにも呼称があるのだ! そう!会社の変な掟・其のニは会社にはいっぱい名前がついてるんだよ。ってこと。しか も他の会社は絶対に「さん付け」、呼び捨ては厳禁ということをお忘れなく!

会社って不思議。

新入社員時代の自分の業務日誌を読み返してみると、その大部分をパシリに使われていることが判明した。更にその中の大部分が「商品券の購入」であることも判明した。 重厚長大、伝統的、保守的 日本企業の場合「商品券」というのは非常に重要なアイテムとして使用される。それはまるでドラクエにおける薬草のような存在だ。さすがは商品券!日本の主婦がもっともお歳暮、お中元でもらいたいもの堂々の第一位なのだ!!

さて、この商品券に関して少し説明を加えよう。商品券は大別して二つのグループに分けることができる。一つは「全国共通券」そして、もう一つが「各デパート発行の商品券」だ。聡明な読者はもうこのネーミングだけで説明はいらないだろう。だが、聡明でない人のために少し補足することにしよう。これは、読んで字の如くで「全国共通券」はどこのデパートでも使えるのに対し、「各デパートでの発行」は三越なら三越。阪急なら阪急でしか使えないのだ。そして、当たり前のことながら「全国共通券」の方が人気も高いし、チケット屋における換金率も高いのだ。

さて、だいぶ前置きが長くなってしまったが伝統的日本型大企業ではこの「全国共通券」を実に色々なシーンで多用する。ほにゃら課長代理、課長昇進のお祝い。ほにゃんこ部長お嬢様の就職お祝い。ぽにょん次長、ロンドン支社ご栄転のお祝い。などなど。

僕が今、購入してるこの全国共通券たちはドンドン知らないおじさん達の手に渡るのかと思うと中々感慨深い。量も半端じゃない。いっぺんに80万円分も買ったりする。(しかも数週間で使い切ってしまう。)買い占める気か!こりゃ!給料上げろ!

さて、この商品券たち実に色々な掟がある。まず掟其の一!必ず三越で購入すべし!伝統的日本型大企業においてホルスタインの黒が赤に変換されたあの包み紙は最高のステイタスなのだ。そして掟其のニ!包装紙の上に更に茶封筒をかぶせること。えぇ〜!折角のホルスタインが台無しじゃん!!でも、こういうお金っぽいものを剥き出しで渡すのはとっても失礼なんだそうな。武士道の影響か?そして掟其の三!商品券は全て1000円券で購入すべし。10000円券などはNGなのだ。理由はよくわからんが、とにかく厚みがあるのはいいことなのだ。 たかが商品券。されど商品券なのだ。

会社って不思議!
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◆ 今週のマメ知識
三越のあの赤と白のホルスタインっぽい包装紙は実は猪熊弦一郎画伯がデザインしたものです。どの角度から見ても美しい図柄であるということを念頭にデザインされました。「花ひらく」というちゃんとした作品名もあるのです。

前回のパシリネタで更に記憶が蘇ってしまった。
新入社員時代の重要な任務の一つに「弔電」と「祝電」を打つというのがあった。
念のため、この二つの言葉に関して説明しておこう。
「弔電」とは取引先の偉い人が天に召されてしまった時に打つ電報のこと。
そして、「祝電」とは逆に、取引先の偉い人が出世したり娘が大学に受かったりした時打つ電報だ 。
大体、学生時代における【電報】のイメージとは、東北から身一つでデコイチに乗って上京し、一生懸命働く勤労青年のもとに、三年目の冬、突然「チチ キトク スグカエレ」というのが届く。みたいな感じだった。何か知らんが電報とは おしん がまだ娘だった頃の時代にとてつもなく大変なことが起きた時、なんの前触れもなく送り届けられる全文カタカナの、脅迫文のようなヤツといった感じだ。
20世紀の後半に東京で生まれ、東京で育った僕が自分の人生において電報を打つなどということは確実に一生ありえないと思っていた。が!しかし伝統的日本型大企業では非常に多くの電報を打つのである。そして、企業における電報は冒頭で説明した二つしかない。そして、しかもこの二つに関しては異常な数のフォーマットが用意されているのだ。

まずは「弔電」。ベースは「ゴメイフクヲオイノリシマス」って感じ。
これにオプションで「ゴソンプサマ(おやじのこと。御尊父様)」「ゴボドウサマ(ママのこと。御母堂様)など逝ってしまわれた方の続柄が付け足されるのだ。
そしてもう一方の「祝電」も同じくなのだが、こちらの方は更に複雑で「出世用」「結婚用」「就職祝」「入学祝」などなど様々なベースがある。これに弔電と同じく色々とオプションをつけていくのだ。

さて、気付けば、だいぶ前置きが長くなってしまいました。原稿いっぱいいっぱい。
そこで、次回は「弔電」「祝電」実践編を送るのでよろしく!

前回、祝電、弔電ごときなのに異常に熱が入ってしまい、前置きだけで終わってしまった。 そもそも、こんな情報が役に立つのかも疑わしいが書き始めてしまったので書き終えてしまいたいと思う。さて、前回の続きだが、この電報というのが、実はかなり奥が深いのだ。そこで今日はビギナー達のためにかなり優しく、順を追って流れを説明したいと思う。

まずは115に電話してみよう。30代後半と思われる女性の交換手が出てくる。そして、この先は、はっきり言って、全て彼女のなすがままなのだ。
なすがままぁ。
彼女は早口でまず「電報ですか?」と聞いてくる。
当たり前や!他に何があんねん。と思いながら「はい。」と答える。
そして「えっと、えっと祝電でぇ」と弱々しくつぶやくと 「はい、祝電でございますね。文章の方はいかが致しましょうか?」と聞いてきます。
そこで、すかさず自分の会社で用意してくれているフォーマット文を誇らしげに読み上げる。
「華燭のご盛典を祝しますとともに、お二人の新しい門出にあたり、ご多幸とご健康をお祈りいたします。」 むーん、難しい。よくわからんが、これが伝統的文章なのだ。

さて、次に送り先の人名、住所(結婚式の場合は披露宴の式場、葬式の場合は寺など)などを伝える。すると、今度は女性交換手の方から、いきなり「では確認します。カショクノゴセイテンヲシュクシマ・・」と始まる。
OKを出すと「では次に送る方のお名前。ホ・ニ・ャ・ン・コ様ですね?では確認します。」
ん!今、確認したんじゃないの?と思ったら今度は「ホタルのホ、ニンゲンのニ、ヤギのヤで小さいヤ、ミカンのン、コドモのコ」とか早口言葉のように言われるのだ。凄い!何か知らんが凄いぞ、女性交換手!

彼女に身を委ねはじめてから5分。電報の発注は最終局面を迎える。
「それでは台紙をお決めください。」ダイシ?大師?川崎大師?
女性交換手は僕の「?」の間など少しも気に止めないで話し続ける。
「一番お高い漆塗りのが5000円。一番お安い押し花が1500円。その間に2000円のものと3000円のものがございます。」
お・おしばな?一瞬NTT社内で交換手がコスモスを新聞に挟んでる図を想像してしまったが、とにかく僕は漆塗りで発注することにする。

ここで最後に重要な情報をひとつ!
僕はこの数分後、上司から「馬鹿ヤロー!!!てめぇ押し花でいいんだよ。ぼけ!」と吠えられた。伝統的保守的日本型大企業における電報は漆塗りは絶対NGなのだ。

新入社員は最初が肝心。ボケっとしてる場合じゃない!
特に重要なのは社内における陰のヒエラルキーを見極めることだ。
通常、本部長→統括部長→担当部長→次長→課長→係長というのが当たり前な構造なのだが、中には「ヒラ」でありながら部長以上の権力を持つ女性社員がいるのだ。彼女たちのことを通称「お局」という。

お局にはいくつか特徴がある。

其の一、推定年齢38〜45歳。東京オリンピックの前後に生を受けている。
其のニ、かなり個性的(色んな意味で目を引く)なファッション。
其の三、人間の好き嫌いが激しい。
其の四、その部署の本当の支配者(たいてい、取締役もしくは統括部長)にだけはなれないお世辞を使う(たまに元愛人というケースもある) 其の五、ランチタイムの休憩室で「いいとも」でなく「ひるどき日本列島」を見る。

これらの条件を兼ね備えた女性社員は正にお局を自称しても全く問題ないと言えよう!
さて、このお局の中でも最も権力を握っているのが、経理部のお局なのだ。
理由は簡単。金を握っているからだ。
筆者が勤務していた会社にも経理のお局は存在していた。彼女は通称「経理の赤壁」と呼ばれて恐れられていた。彼女は昭和37年生まれ、推定身長174cm、白髪まじりのおかっぱカット(そもそも「おかっぱカット」って存在するのだろうか?)そして常に、牛が突っ込むほど真っ赤な色したセーターを愛用していた。恐らく彼女のニックネームはその体躯とその鮮やかな赤色がルーツであろう。

当時、人事部にいた僕にとって経理というのは正直あまり馴染みのないとこだった。しかし、ある年の夏、僕は法人営業部に異動になった。そして、彼女の恐ろしさを初めて知ることになるのである。 (つづく・・)

ある年の夏、僕は人事部から法人営業部に異動になった。
折角ぬるま湯に浸かってたのに、いきなり氷水をぶっかけられたような気分だ。
とにかく、「接待」と「出張」が限りなくゼロに近い部署から激しく横行する部署への異動だった。
異動して、二週目にいきなり大阪出張+キタで飲み接待というミッションを与えられた。

通常、伝統的重厚長大型日本企業ではヒラは出張費や接待費を立て替えることが多い。(偉くなると仮払金といって、会社から多額の金を事前に受け取れるようになる。)そして、これらを自分のカード決済日が来る前に会社に振り込んでもらうという自転車操業を繰り返すのだ。こういうと聞こえが悪いが、実はこれは社員の方にも何げにメリットがあり、マイレージがたまったり、身分不相応なゴールドカードが持ててしまったりするのだ。イェーイ!
というわけで、結構みんな平気で数十万円限度額いっぱいに立て替える。
ところが!ここで話は赤壁に戻るわけだが、何と赤壁にムカつかれると、この自転車操業が破綻させられることがあるのだ。むきゅぅーん。
僕はカード決済日を数日後に控えたある日、大阪での出張、接待合わせて18万円の出張精算書を経理部に提出した。ところが、その翌日いきなり精算書が僕のデスクに送り返されてきた。何じゃこりゃー!どういうこっちゃ?

ポストイットに
@印鑑の押す個所が違う。
A「スッポンポンダイナマイト」とはどういうお店か説明せよ。
B行きは新幹線なのに、何故帰りは飛行機なのか?
という三つの質問を突きつけられた。

ふざけんな!赤壁。
スッポンポンダイナマイトの説明だと〜。てめー、そりゃハラスメントだろ。こら!とにかく18万円が決済日前に振り込まれないのは僕にとっては本当に死活問題。仕方ないのでつき返された精算書をひっさげて僕は赤壁のもとに向かうのだった。 (つづく・・)

経理部のフロアーは実は人事部のフロアーと同じ階にある。つまり僕は前の部署だった頃はよく、経理部の横を通っていたのだ。しかし、当時は赤壁の噂は全く知らなかった。
おのれ〜赤壁。一体どんなヤツなんだお前は。

数分後、僕は赤壁の前にいた。広い経理部のブースでどれが赤壁かは数秒で判断することができた。窓際のそのデスクには明らかに周囲に違和感を与えるものだった。小さなサボテンの鉢が置いてあり、その鉢にもまた赤い布が巻かれていた。このトゲトゲ君も赤壁の手先なのだ!
赤壁は業務時間中にも関わらず堂々と家庭画報を読んでいた。節くれだった指でつむじを掻きむしりながらトレードマークの赤セーターの毛玉を一心不乱に取っていた。
率直な感想は「この人、何でうちの会社受かったんだろう?」だった。
赤壁は僕の方を向きながら「誰?」と聞いてきた。僕は部署名と名前を告げる。
すると、「ああ、あんたね。これ全然違うわよ。ダメ!」と言われた。殺意が芽生える瞬間を捉えることができた。しかも赤壁は大声で「スッポンポンダイナマイトって何よ!」と悲鳴のような声で聞いてきた。周囲の若い女子社員が一斉に僕を見る。こ・こ・こいつぅぜってー殺す!
とにかくその場を一秒でも早く離れたい僕はオロオロしながら「あの〜、これはですね、お客さんに連れられてですね・・僕も初めて行ったのですが・・えーと」と答える。意外にも赤壁は「あ、そう。上司の許可をもらってるならいいわ。」と一言いうとアッサリ承認してくれた。そして僕の顔を見てニーと黄ばんだ前歯を見せながら笑いかけた。口からほんのりウンチの匂いがしたが、僕もニコヤカに「ありがとうございます!」と言ってみせた。それ以降、赤壁に意地悪をされたことはない。どうやら気に入られたらしい。

その後の僕は一応、念のため月に一度ぐらいは出張のお土産を赤壁に献上するよう心がけた。結果として約半年間の営業時代はこれといった問題もなく過ごすことができた。営業部の仲間たちは僕のことを「猛獣使い」と呼んで尊敬してくれた。これが僕とお局の物語。

最後に一言。お局は絶対に敵に回すな!むしろ味方にするべし!お土産は忘れずに!!